オーストラリア/日本で 「働く」

オーストラリア/日本で 「働く」

グローバル人材として活躍しよう
オーストラリア/日本で「働く」

 オーストラリア国内での就業、あるいは日本に帰国後の就職・転職など、今後のキャリア探しに奔走している人も多いだろう。本特集では、オーストラリアの雇用の特色を始め、日豪両国での就職に必要な準備や採用動向、グローバル人材として活躍するためのヒントなどを、専門家のアドバイスと併せてお届けする。

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就労可能なビザ

 永住権・市民権保持者でない人がオーストラリアで働く場合、就労許可のあるビザを保持していることが必須条件となる。例えば就労ビザ、ワーキング・ホリデー・ビザ、学生ビザなどが挙げられる。

 ただし上記のようなビザがあれば無条件に働けるというわけではなく、ワーキング・ホリデー・ビザの場合は同一の雇用主の下での労働は6カ月以内(場合により1年)、学生ビザなら労働時間は2週間で40時間以内などの規則がある。移民局のウェブサイトなどでビザの条件など詳細を必ず確認しよう。

■オーストラリア移民局
Web: www.australia.gov.au/information-and-services/
immigration-and-visas

雇用形態、条件

 一般的に、オーストラリアにおける雇用形態は、週の労働時間によって「フルタイム」(Full – ti me)か「パートタイム」(Part-time)に分けられ、雇用契約期間によって「正社員」、「コントラクト」(Contr act)、「カジュアル」(Casual)などに分けられることが多い。

 正社員は、有給休暇や有給病欠などの休暇制度、「スーパーアニュエーション」(Superannuation/スーパー)という年金制度などが適用される。会社によっては病気などの治療費を負担してくれるところもある。

 スーパーアニュエーションとは基本的には退職後の生活のための積み立てのこと。雇用主が被雇用者のために、給料の9.5パーセントをスーパー運用基金(SuperFund)に積み立てる。学生ビザ、ビジネス・ビザ、ワーキング・ホリデーなど、永住権を持たない日本人で、オーストラリア滞在中にスーパーアニュエーションに加入していた人は、帰国時などにオーストラリア国税局(ATO:Australian Taxation Office)に換金請求をすることができる(全額は戻らない)。求人欄に「+Super」と書かれていることを見掛けることがあるが、これは給料の他にスーパーアニュエーションが付くという意味だ。

 また、オーストラリアでは新規採用後、試用期間(Probationar y Period)が設けられていることがほとんどだ。大抵3カ月、まれに6カ月という企業もある。そして日本の場合、健康保険、通勤交通費といったものも会社が負担あるいは一部負担するのが一般的だが、オーストラリアでは必ずしもそうではない。

 更に、オーストラリアで働くためには9ケタのタックス・ファイル・ナンバー(Tax File Number/TFN)が必要だ。TFN取得申請はATOのウェブサイトからオンラインで無料で行うことができる。

■オーストラリア国税局
Web: www.ato.gov.au

仕事の探し方

 オーストラリアにおける求人の主な情報源は、①オンライン求人サイト「Australian Job Search」(Web:job search .gov.au)や履歴書やポートフォリオが登録できる「Seek」(Web: www.seek.com.au)、「Adzuna」(Web: www.adzuna.com.au)など、②新聞の求人欄「Sydney Morning Herald」(土曜版)など、③大学の掲示板、④口コミなどがある。

 仕事を探すサイトではないが、Facebookに似たビジネス・プロフェッショナル向けのソーシャル・ネットワーク「LinkedIn」(Web:www.linkedin.com)を活用している人も少なくない。自分の経験、スキルを上手にまとめて登録しておけば、企業などからコンタクト
がある可能性もある。

 主流はインターネットでの情報収集だが、オーストラリアでは「口コミ」の力も大きい。企業側が社員の友人・知人などに適切な人材がいないか尋ね、どうしても見付からなかった場合に求人情報を一般公開する、というのも珍しい話ではない。それは「信用」が重視される社会だということを示している。履歴書に推薦人(Referees)を2~3人記入するよう指定されたり、以前働いていた会社からの推薦状が重視されることもあるなど、人物考査を重んじる傾向からも、オーストラリアのビジネス・シーンがいかに信用を大切にしているかがうかがえる。

 またオーストラリアでは、企業と就職希望者を結ぶ人材紹介会社(Recruitment agenciesなどと呼ばれる)が発達しているので、該当する専門分野の職歴があれば登録しておくと良いだろう。こうした人材紹介会社には新聞やインターネットに掲載されない求人もあるというから見逃せない。

 カジュアル・ジョブ(アルバイト)の場合、求人情報が店頭に貼り出されていたり、自ら履歴書を持ってさまざまな店舗に配り歩いて連絡を待つという方法で職探しをするのも一般的だ。

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オーストラリアで使える資格

 オーストラリアでは、仕事に就く際、職務経験が重要視される。職種によっては経験に加えて有資格者であることが必須の場合があるが、未経験のジャンルの仕事に就こうと考えるのであれば、自己アピールのためにも資格取得は有効な手段となる。以下のような資格は、民間のカレッジなどで数日間のコースを受講して取ることが可能だ。

●RSA(Responsible Service of Alcohol)
 アルコール飲料を扱う飲食店(パブ、バー、レストランなど)で必要とされる資格。この資格を持たずに顧客に酒類を提供することは法律で禁止されている。

●バリスタ
 エスプレッソなど、コーヒーを作る上で専門的な知識を持つバリスタは、世界で通用する資格だ。中にはラテ・アートを習いたいという理由で学ぶ人も多い。政府公認の証明書と各学校発行の証明書がある。

履歴書など

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 オーストラリアでの就職活動に当たり、英文の履歴書(カリキュラム・ビータイ/Curriculum Vitae: C.V.またはレジュメ/Resume)、履歴書に沿えるカバー・レター(Cover Letter)、場合によっては推薦状(レファレンス・レター/Reference Letter)も用意する。

 日本とオーストラリアでは企業が応募者に求めているものが違うということをしっかり認識した上で、履歴書で何を強調すべきか十分に注意を払って作成に当たりたい。フォーマット(書く順番など)も異なる。

 カバー・レターは、履歴書に書き込めない要素をアピールするアイテムでもある。自分がいかにそのポジションに興味を持って応募したか、ポジションにいかに適した人材かをアピールすることが大切になる。これらの書類は、企業や職種によってどの部分を膨らませるべきかが異なるので、数種類用意し、アップデートも忘れずに。

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取材協力:BBIジャパンセンターオーストラリア/大橋賢一さん

オーストラリア留学を経て

 オーストラリアでの語学留学や職務経験を積んだ後、日本での就職を考える人も多いだろう。日本に帰国し、就職活動をスタートする予定の人も、オーストラリアでの体験を踏まえ、どのように行動すべきか戸惑うこともあるかもしれない。

 海外にいても、帰国前からオンラインの就職支援サービスに登録して情報収集をしたり、今後のキャリア形成について相談することも可能だ。

 また、帰国後の就職を希望する人のための海外での合同企業説明会などもあるので、そうした情報をしっかりつかめるようアンテナを張り巡らせておくことが大切だ。少なくとも、帰国の半年前には準備を始めておいた方が良いだろう。

日本企業が求める人材

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 近年、日本企業はグローバル人材を求めていると言われている。グローバル人材とは一般的に、「英語など多言語が操れる」「外国人と接することに慣れている」「外国人の仕事の仕方や物事の考え方に触れ、それを知っている」「しっかりと日本人としてのアイデンティティーを持っている」人物のことだ。

 留学経験とは上記のことが成し得る環境下にいるということなので、留学生は皆グローバル人材になり得る。しかし、今後のキャリアを見据えて計画的に行動しない限りは、単に海外に行っていた人、外国に滞在していたのに大して英語ができない人となってしまうので、真剣に就職を考えているのなら、危機感を持って計画的に取り組むことが必要だ。

 そして、グローバル人材であるかどうかを判断する基準として企業が重点を置くのが、①TOE IC730点以上(最近では800点以上とも言われている)・ケンブリッジ検定FCEレベル以上、②専門スキルや知識を身に付けるコースなどを終了した証明書、③英語環境での職場経験の有無、④ビジネス・レベルでの実践英
語力などが挙げられる。つまり、履歴書に上記の内容を書くことができると、グローバル人材候補として、企業が注目してくれる。

留学時に念頭に入れておくべきこと

 目指している就職先の企業が何を求めているのかが分かっているのなら、その採用条件や予想される期待内容を把握し、現在の自分と照らし合わせた時に生じるギャップがあれば、それを埋めていく資格や語学力、経験などを積む必要があるだろう。

 明確な目標はなく、漠然としているのであれば、必要なものとして① 英語環境でのインターンシップ経験、②ビジネス・レベルで使える英語力習得・ケンブリッジ検定FCEレベル、③TOE IC730点以上(最低履歴書に書けるのは600点以上)、④専門分野やスキ
ルを用意しておくと良い。

 語学力アップの方法はそれぞれだが、まずは語学学校などで中級レベルまで上げること。それがないと上記の① 、② 、③ には進めない。また、どんな職業に就きたいかで何を磨くかが異なってくる。単純にコミュニケーション能力を磨きたいのなら、そういった環境が期待できるインターンシップを経験すると良いだろう。また、ビジネス・レベルで使うメールや電話応対、会議などを英語でできるようになりたいのであればケンブリッジ検定FCEの取得が有効だ。

 専門スキルを用意するには、ビジネス、IT、HRなど分野によって異なるが、訪日外国人を対象とする業種のスキルを学ぶのも良い。例えば、高級ホテルなどでのホスピタリティー、マッサージや美容などに関連するスキル。英語教師であれば、J – SH I N EやT E S O Lといった英語を使って英語を教えることができるスキル、日本語教師であれば日本語教師養成講座(4 20時間)など、留学しているからこそ取得可能な資格や、今後の日本の社会環境を見据えたスキルなどが重宝され効果的だと言える。

留学経験者の強みの生かし方

 海外での経験と日本社会の独特なビジネス・マナーの両方を理解している人材は、日本企業でも求められている。特に日本で就職する場合、長期採用を考える企業が多い。経験がなくても必要な知識は入社してから教えるという考えの企業も多数あるため、日本のビジネスのノウハウを持ち、海外のビジネのノウハウも心得ている、そして英語力のみではない経験、コミュニケーション、苦境に立った時に対処できる人間性が重視され、そういった人材であれば、将来が期待されるだろう。

 留学時は、語学、異文化理解など会話だけに限らずコミュニケーション能力(相手を理解する力などを含む)が養える環境下に置かれる。そのため、それを生かせる商社、旅行・観光業、ホテル業、ホスピタリティーなど、人と接する機会が多い業種を目指すのも良いだろう。海外進出している、外国人を対象に仕事をしている日本国内企業などの営業職、人事、日本語教師、英語教師なども留学経験者ならではの仕事となり得る。

具体的なプランを立てよう

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 日本帰国後に就きたい職業など、明確な目標があるのなら留学中に身に付けておくべきことなど、しっかりとプランを立てることが重要だ。限られた時間の中で目標を達成するためにも、帰国予定日から逆算して準備を進めよう。

 一般的に就職に必要な中・上級程度の英語力を付けるためには、8~16週間程度、語学学校に通う必要があると言われている。その上で英語環境での職場経験(インターンシップ)を4~12週間程度するのが理想的だ。また、必要に応じてビジネス・レベルの英語を学習できるコース(ケンブリッジ検定など、10週間程度)を受講したり、TOEICで高得点を取得するために、2~4週間程度の学習時間を設けると良いだろう。

 そして、授業料などの費用の準備や工面するためのアルバイトに要する時間などもしっかりとプランに加えておこう。これらの計画を実行するには、最低でも半年から1年は掛かるため、計画的に進めることが望ましい。

 また、人材派遣登録会社への登録も少なくとも就職する半年前くらいにはしておくと良い。登録をすることにより、無料で就職活動に向けてのエントリー・シートの書き方などのアドバイスを受けることもでき、具体的なプランを立てるためのサポートをしてくれる所もある。多くの求人情報を送ってもらえるため、さまざまな情報を入手できるもの利点だ。人材派遣会社を有効的に活用することで、就職活動前に多くの情報を収集でき、自分が何を準備するべきかなど目標設定とその計画や準備が明確になる。そして、多くの就職先の情報を無料で紹介してくれたり、その後の面接のアレンジをしてくれることもメリットの1つと言える。就職活動を真剣に考えているのであれば登録しない手はないだろう。

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